窓際でレースのカーテンが、人知れず小さく膨らんでいる。ベランダで洗濯物が小さく揺れて、微かな音をたてている。実家では、夏になると家中の引き戸を全部はずして、そこに間仕切りがわりの、浴衣地で作った長い暖簾を掛けていました。薄い藍染のとんぼ柄。開け放った玄関から入ってくる風は、暖簾をふわりと翻しながら、家の中を通りぬけていきました。
台風の日の午後、安全な室内から、風が大きな手のひらで、木々を乱暴に撫でているのを見ているのが好きです。葉っぱはうねって裏返りながら、表の濃い緑と裏の薄い緑を交互に見せて、波打つように大きく揺れます。葉が、裏の薄い緑を見せるとき、まるで魚がその腹を見せて泳いでいるみたいだな、といつも思います。窓の近くに立って、無声映画を観るように、荒波に揉まれる魚の大群を見ています。
アスファルトに映る、木漏れ日が作る葉の影。その影が、濃淡を震わせて水面のように揺れています。風はほとんど吹いていなくて、木を見上げても葉っぱが揺れているようには見えません。それでも、路上の影は、風にくすぐられて、くすくす笑っているみたいに揺れています。その様子を、なんとなく立ち止まって見ている時間が好きです。
